30年の時を経て、再び由芽子は札幌にいる。北海道情報大学のスクーリング受講の為である。
「再び」というのは正確ではない。「MEN☆SOUL」のライブに参戦するためススキノまで来たのは片手では足りないくらいだ。だが、それらは全くの弾丸ツアーで夕方着いて翌朝帰ることがほとんどだった。今回は「映像セミナー」と同様に1週間の滞在である。
「情報科教員免許」取得を思い立ったのは昨年である。トルコを訪ねた際のホストシスターがエンジニアだったことが直接の動機と言えば言える。彼女と昔のコンピューターのあれこれをおしゃべりしながら、ああ、もっと話したいと思った。
「paiza」と出会ったのは、曲がりなりにもプログラミング教室をやっていたからだが、「テックアカデミージュニア」を廃業してしまったので、「paiza ラーニング」を続ける必要はなかったのだが、年会費7000円ほどで受講し放題、というのは、私の「お得感」を満足させるものだった。なんだか「IT技術って、おおむねお得」だと思うのだが、いかがだろう。
1週間の集中講義で学んだのは「C言語」だ。一口に「プログラミング」と言っても、幾通りもの種類がある。由芽子が大学時代にかじった「FORTRAN」もその一つだが、「C言語」も「プログラミング」の中では古い(らしい)。集まった学生には「今さらC言語?」みたいな空気もあった(ようだ)。だが、6日間の講義を受けて、由芽子には目からうろこが落ちるように「そうだったのか」と思うことばかりだった。
中でも「コンパイル」という作業は、やってみないとわからないものだった。
「コンピューターは2進法で計算する」ということは知識として知っていたし、子どもたちにも知ったかぶって教えたものだ。「0」と「1」だけの文字列を人間が読める文字列に直す。「翻訳」という日本語があてられる(らしい)。
何もかもが新しい知識だった。新しい「マイストーリー」が今始まった。