1995年の暮、私は実家で過ごしていました。最初の発病後の自宅療養です。(2007年の過去記事「月を数える1〜12」の8回目あたりになります)。毎日ごろごろしている私に母から「掃除機くらいかけろ」と言われ、昔の掃除機を持ち出したところ、二つ付いているはずの車輪が片方しかなくて、ところがその旧式の掃除機の吸引力が強力だったことに驚いた顛末を「朝日新聞」の「ひととき」に書いたはずです。今考えると、ワープロの入力が困難だったので、原稿用紙に手書きだったかもしれません。実家に原稿用紙はたくさんありました。
クリスマス前に自宅に戻る際、迷惑をかけて申し訳ないと詫びる私に、母から「お前が戻ってきてくれて嬉しかった」と言われました。母からはもっぱら叱られることばかりだったので、不意を突かれる言葉でした。
その片輪走行の掃除機は、どうやら弟が何かの折にうっぷん晴らしに蹴っ飛ばしたらしいです。腹立ちまぎれにものを壊すことで感情が立ち直ることもあります。