結婚して初めての里帰りは「初客」と言って、結婚式の次の日でした。私は結婚式の前後に産休代替講師の仕事をしていたため二日間だけ休暇を取りました。金曜日が挙式、土曜日(当時は半ドンで出勤する日)に「初客」でした。
挙式の日は、朝から美容師さんに実家に来てもらって「花嫁」支度をしました。北海道から駆けつけた親類一同とともに農協のマイクロバスで足助の(今の)我が家へ出向き、仏壇に線香をあげて双方の親戚が談笑する間、花嫁姿の私は縁側で椅子に座って晒し物になっていました。(花嫁を見物に来た人や子どもには菓子を配る習慣でした)。
挙式後、夫と私はタクシーで新居に向かったので、夫の車は足助に置いたままでした。土曜日の朝、今はなくなった西中金駅まで三河線に乗り、その後どうしたか忘れましたが、和服の訪問着の一そろいを抱えて夫と二人で足助の家へ行きました。「名披露」と言って、私の名まえを染め抜いた風呂敷を持ってムラの一軒一軒を回りご挨拶し、その後夫とおばあさんと3人で実家へ「初客」に来たのです。つい2日前まで住んでいた家に「客」として、しかもおばあさんに主導権を握られてきたわけです。
その頃は、新婦人でも「足入れ婚」の実態をアンケートするなどしていました。それほど昔ではない本当にあった話です。
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