2012年02月28日

前進座

先日、前進座の創立80周年公演に行って来ました。前進座を見るのはこれが2回目です。前回は、先代の河原崎国太郎がいた頃ですから、30年近く前です。
前進座を少しググっていただくと、共産党とのかかわりが見えてくると思います。私が今回見たのも「赤旗読者優待公演」でした。なので、当初は私一人で行くつもりだったんですが、チケットが残っているから2枚買ってくれと言われて、実家の母と二人で出かけました。
まあ、いくらかはお義理で出かけたわけですが、内容は実にすばらしかったです。30年前に見た時は、私にはシナリオの知識もなにもありませんでしたが、歌舞伎としても新劇としても、超一流でした。
歌舞伎の出し物は「毛抜き」と言って、毛抜きをはじめキセルなどの金属類が宙に浮くという奇怪な現象が、巨大な磁石の仕掛けであった、という展開で、こんな話は聞いたことがないが、と思いましたが、おそらく前進座の創作歌舞伎でしょう。後半の「水沢の一夜」というのは、蘭学者高野長英が、出獄して実家に立ち寄った一夜を描いたものでしたが、固くなりがちな筋立てを、長英をとんでもないお調子者に描いていて、それが見事に劇的な展開を見せてくれる仕掛けになってるんです。日ごろ「民主的な」映画にお笑いの要素が欠けていると嘆いていた私にとって、一つ答えを出してくれたような作品でした。しかし、もちろんお笑いが主眼の作品ではありませんから、結末は、長英が「日本の未来を変えるため、私は生き延びなければいけないのです」みたいな、赤旗読者の心根をくすぐるような幕引きでした。
また、そうした筋立てとは別に役者さんの演技も見事で、劇中、誤って銃で撃たれた若者から弾をとりだすちょっとした外科手術を長英先生が行うのですが、もちろん舞台ですから特殊技術もなにも使えません。ただひたすら演技力でもって「痛い」というシーンを熱演するのですが、本当にこちらまで背中がぞくぞくするような「痛い」演技でした。
ああ、それとは別に、歌舞伎の方では「黒子」という特殊効果が使えるんですね。毛抜きやキセルが上下するのはもちろん黒子が棒に付けた毛抜きをゆらゆらゆすっていました。他にも、首をうちとられた死体を黒子が布で隠して舞台袖まで運んだり、と、西洋式のお芝居では考えられない仕掛けです。歌舞伎の様式美と相まって、日本人の美意識を垣間見たように思いました。
ところで、今週末には隣岐阜県までお芝居を見に行きます。高校で同級生だった方が出演されるので。そちらの模様もまた報告いたします。
posted by nora_asuke at 05:13| Comment(0) | #映画
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