2017年01月31日

シナリオ「連句2017 歌仙」 E

○予備校の廊下

   掲示板に「国民文化祭あいち」の告知が貼ってある。「会場 熱田神宮」の文字がズームアップになる。

 

○熱田神宮・外景

   こんもりとした森と、いくつかの拝殿、それに結婚式場などの建物がある。

   掲示板に「国民文化祭あいち」のポスター。

 

○異次元

   テーブルに向って、千鶴子、満寿子、耕一、暁美。

フェアリー「四季桜冬枯れの山賑わいて」

 千鶴子「暁美さん、どうなの? 例の高校生」

フェアリー「ダウンコートの色はとりどり」

暁美「はい、国民文化祭あいちに、来てくれることになりました。なんか、二人だけに通じることがあるみたいで」

満寿子「あらあ、私の水晶玉はなんでもお見通しよ」

耕一「しかし、現役の高校生が歌仙巻くなんてむりじゃないかなあ」

千鶴子「ですから、ここで前半を巻いたものを会場に持って行って、後半部分だけに参加してもらいます」

満寿子「それはいい考えね。二人にはぜひ恋の句をお願いしたいわ」

耕一「若い人の恋か。楽しみだな」

 千鶴子「じゃあ、ここでちょうど初折りの裏のアガリですから、今日はここまでね」

   一同、別れの挨拶をして、それぞれの扉から帰っていく。

   残された紙に、ここまでにフェアリーが読み上げた句が清書されてある。

   それぞれの句の詠まれた場面をフラッシュでつないで、フェアリーが歌仙の前半部分を詠みあげていく。

フェアリー「木の芽時ミレニアムから17年」

〃 「田返しをする新しい人」

〃「ログハウス注文をするネットにて」

〃 「おからクッキー試食コーナー」

〃「月の夜にダージリンティー馥郁と」

〃 「原稿書いて鈴虫を聞く」

〃「豊の秋相場荒らしのブランド米」

〃 「太平洋を渡る経済」

〃「『報道』の腕章巻いて女性記者」

〃 「6か国語で交わす挨拶」

〃「ママの読む絵本めでたしめでたしと」

〃 「画学生とは道ならぬ恋」

〃「仏壇の遺影は息子そっくりで」

〃 「サイダーの泡白くはじける」

〃「駄菓子屋のおばちゃんにだけ言う本音」

〃 「トラ猫ひょいと道を横切る」

〃「四季桜冬枯れの山賑わいて」

〃 「ダウンコートの色はとりどり」

posted by nora_asuke at 08:41| Comment(0) | #シナリオ

2017年01月30日

シナリオ「連句2017 歌仙」 D

○信州にある美術館・無言館

   季節は盛夏。

雨のそぼ降る中、車で無言館へ向かう千鶴子。

運転しているのは哲雄。

 哲雄「君の無言館参りは毎年雨だな」

 千鶴子「お兄ちゃんが出征した日も、こんな日だった」

フェアリー「画学生とは道ならぬ恋」

 

○無言館・中

   数人の来館者がいる。

戦没画学生の絵に囲まれて立つ千鶴子。不意にその姿が消える。

 

○異次元

    時のトンネルを遡る、千鶴子、満寿子、耕一、暁美、そして、二千歳とミレ。

 

○繁華街の路地裏・夜

2000年にタイムスリップしている。

   小さな小屋で占いをしている満寿子。17歳若返っている。

   小屋の外には、OLの行列。

   満寿子、水晶玉を覗き込んで客のOLに

満寿子「転職なんて、簡単に考えちゃだめよ。この先日本は不景気で、仕事に就きたくても仕事がない人であふれるんですから」

フェアリー「仏壇の遺影は息子そっくりで」

 

○大学の教室(前と同じく2000年)

   英語で授業している千鶴子。

千鶴子(英語)「今年がなぜうるう年なのか知っている人は?」

フェアリー「サイダーの泡白くはじける」

 

○田舎の家々(2000年)

   バイクにまたがって郵便物を配っている耕一。畑の農婦に声をかける。

 耕一「加藤さんのおばあちゃん、かもめーる買ってくれんかい」

フェアリー「駄菓子屋のおばちゃんにだけ言う本音」

 

○結婚式場(2000年)

   花嫁花婿姿の暁美と信也。ブーケトスを受け取ろうと群がる若い友人たちの後ろを、仔猫のミミが横切る。

フェアリー「トラ猫ひょいと道を横切る」

 

○産院(2000年)

   2分割画面でそれぞれ二千歳とミレの生まれた様子をロングショットで描く。

 

○異次元

    時のトンネルを戻ってくる、千鶴子、満寿子、耕一、暁美、二千歳、ミレ。

posted by nora_asuke at 11:44| Comment(0) | #シナリオ

2017年01月29日

シナリオ「連句2017 歌仙」 C

○高校の美術室

   窓の外の景色は初夏に変わっている。

   椅子に腰かけて「考える人」のポーズをとる二千歳。

   その二千歳のクロッキーを描いているミレ。

二千歳「なんで自分がこんなことを……」

ミレ「他人の成績表見た罰です」

   ミレの絵は、かなり上手い。

 

○田舎の国道

   宅配便のワゴンを運転する耕一。

   ラジオから、各地の初夏の様子を知らせる便りが読まれる。

 アナウンサー「田植えの季節になり、田んぼでは様々な機械が働いています。……」

   耕一のワゴンの外にも田植えの風景。

 

○耕一の家

   北海道の洒落た一軒家。

   耕一、自家用車に乗り換えて帰宅する。

 

○耕一の家・中

 耕一「ただいま」

   と、中に入ると、玄関わきのリビングに入っていく。しかし、もう一人の耕一が分身して、耕一のマイルームに入り、パソコンのスイッチを入れる。

   フェイスブックを開く耕一。

 

○千鶴子の家

   洒落た洋館のリビング。夫(哲雄・80)が、スカイプで、孫の優希(30)としゃべっている。

スカイプに映った優希「おばあちゃんによく言っておいてね」

哲雄「あの人は連句にしか興味がないからね」

   と、隣室を見る。

 

○千鶴子の部屋

   アンティーク家具で整えられた書斎。古今東西の分厚い本が並ぶ。

   その中に埋もれるように千鶴子、1冊の本をめくっている。千鶴子がめくるとシャッターが切れるようにページが消えて、千鶴子次々とページをめくっていく。

フェアリー「6か国語でかわす挨拶」

 

○暁美の家

   分譲マンション。

   夜遅く、玄関を開けて帰ってくる暁美。

暁美「ただいま」

夫の信也、猫のミミと戯れながら

 信也「お帰り。今日の夕飯は、お隣からもらった筍づくし」

 暁美「贅沢だね」

   と、バスルームに行くと、乾燥機に入っていた洗濯物が空中に浮いて出てたたまれていく。

フェアリー「ママの読む絵本めでたしめでたしと」

posted by nora_asuke at 09:47| Comment(0) | #シナリオ