○予備校の廊下
掲示板に「国民文化祭あいち」の告知が貼ってある。「会場 熱田神宮」の文字がズームアップになる。
○熱田神宮・外景
こんもりとした森と、いくつかの拝殿、それに結婚式場などの建物がある。
掲示板に「国民文化祭あいち」のポスター。
○異次元
テーブルに向って、千鶴子、満寿子、耕一、暁美。
フェアリー「四季桜冬枯れの山賑わいて」
千鶴子「暁美さん、どうなの? 例の高校生」
フェアリー「ダウンコートの色はとりどり」
暁美「はい、国民文化祭あいちに、来てくれることになりました。なんか、二人だけに通じることがあるみたいで」
満寿子「あらあ、私の水晶玉はなんでもお見通しよ」
耕一「しかし、現役の高校生が歌仙巻くなんてむりじゃないかなあ」
千鶴子「ですから、ここで前半を巻いたものを会場に持って行って、後半部分だけに参加してもらいます」
満寿子「それはいい考えね。二人にはぜひ恋の句をお願いしたいわ」
耕一「若い人の恋か。楽しみだな」
千鶴子「じゃあ、ここでちょうど初折りの裏のアガリですから、今日はここまでね」
一同、別れの挨拶をして、それぞれの扉から帰っていく。
残された紙に、ここまでにフェアリーが読み上げた句が清書されてある。
それぞれの句の詠まれた場面をフラッシュでつないで、フェアリーが歌仙の前半部分を詠みあげていく。
フェアリー「木の芽時ミレニアムから17年」
〃 「田返しをする新しい人」
〃「ログハウス注文をするネットにて」
〃 「おからクッキー試食コーナー」
〃「月の夜にダージリンティー馥郁と」
〃 「原稿書いて鈴虫を聞く」
〃「豊の秋相場荒らしのブランド米」
〃 「太平洋を渡る経済」
〃「『報道』の腕章巻いて女性記者」
〃 「6か国語で交わす挨拶」
〃「ママの読む絵本めでたしめでたしと」
〃 「画学生とは道ならぬ恋」
〃「仏壇の遺影は息子そっくりで」
〃 「サイダーの泡白くはじける」
〃「駄菓子屋のおばちゃんにだけ言う本音」
〃 「トラ猫ひょいと道を横切る」
〃「四季桜冬枯れの山賑わいて」
〃 「ダウンコートの色はとりどり」